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法律相談 弁護士 松本 裕美 先生

親族の債務の相続放棄


Q.質問

 私とは疎遠な伯父が3年前に亡くなっており、伯父に多額の負債があったため、伯父の妻子は相続放棄をしていました。その結果、私の父が伯父の相続人となりましたが、父は病床で伯父の負債の事実を知らず相続放棄をしないまま、伯父死亡の1年後に亡くなりました。このとき、私は父の遺産を相続しました。その後、最近になって突然、私に強制執行の通知が届き、初めて私が父を通じて伯父の負債も相続したことを知りました。私はどうすればよいでしょうか。

 

A.回答

  民法は、相続人に対し、相続財産を相続するかどうかについて選択権を付与し、相続の承認・放棄をする機会を与えています。そして「自己のために相続の開始があったことを知った時から3カ月以内」(民法915条1項。この期間を熟慮期間といいます)に、相続財産の調査を行ない、承認又は放棄をしなければならないとしています。

 また、最高裁は、熟慮期間の始期について、原則として、相続開始の原因たる事実の発生を知っただけでは足りず、それによって自己が相続人となったことを知覚した時であると判断しています。

 では、本件のように、伯父の相続人である父が相続放棄をしないで死亡したという再転相続の場合、相談者は、いつまでに相続放棄をしなければならないのでしょうか。

 民法916条は、相続人(相談者の父)が相続の承認又は放棄をしないで死亡したときは、熟慮期間は、その者の相続人(相談者)が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する、と定めています。ここに言う「自己のために相続の開始があったことを知った時」が、本件の伯父の相続の開始を知った時なのか、それとも父の相続の開始を知った時なのか、長年議論がなされていました。これについて昨年8月9日、最高裁は、「相続の承認又は放棄をしないで死亡した者の相続人が、当該死亡した者からの相続により、当該死亡した者が承認又は放棄をしなかった相続人としての地位を自己が承継した事実を知った時」であると判断しました。本件に当てはめると、相談者が父を通じて伯父の相続人となったことを知った時、すなわち、強制執行の通知を受けた時、ということになります。従って、相談者は、強制執行の通知を受けた時から3カ月内に、伯父からの相続を放棄する手続きをとれば、強制執行を免れることができるのです。