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胃癌に対する新しい内視鏡治療に注目!-ESD=内視鏡的粘膜下層剥離術-

胃癌の治療法には「手術」「抗癌剤」をはじめとして様々な治療法がありますが、転移している可能性がきわめて低い早期の胃癌に対しては内視鏡を使ってお腹を切らない治療方法が用いられるようになっています。内視鏡治療は手術に比べ、入院が短期間ですみ、胃の大きさが変わらず後遺症がほとんどない、といった利点があります。
 2006年4月に胃の早期癌に対するESDが保険適応となり、2008年4月からは食道ガンに対するESDも治療も保険適応となりました。

どんな胃癌が内視鏡治療の対象になるのか?
胃癌学会ガイドラインでは
1.癌が胃の表層(粘膜内)にとどまっているもの
2.分化型癌(癌細胞の形や並び方が胃の粘膜構造を残しているもの
3.大きさが2㎝以下のもの
4.癌の中に潰瘍を併発していないもの
の4つの条件を挙げていました。これまで切除が難しかった大きな病変や硬い病変に対しても、ESDによって治療が可能になり、3、4に当てはまらない病変も治療対象にできるようになってきています。

ESD治療の手順
 開腹手術とは異なり、全身麻酔はかけないで、鎮痛剤と鎮静剤を用い口より内視鏡を挿入します。次に病変部の癌を確認し、胃壁全体に染色液を散布します。すると、癌と正常な組織の境が、はっきり見えるようになります。それから電気メスを使い、癌を囲むように印をつけます。次に胃壁の2層目、厚さわずか2~3 ㎜の粘膜下層に生理食塩水を注入すると、切除する部分が盛り上がります。次に最新の電気メスで薄く削ぐように患部を切除します。最後に患部の出血を止めます。順調にいけば、通常1時間ほどで終了することが多いですが、大きな病変では数時間要する場合もあります。それでも開腹手術のわずか3分の1程度の時間で終了します。
 治療後多くの方は1~2日で食事も可能となり、入院も1週間程度ですみます。しかし、その後の病理検査の結果で、リンパ管や血管、あるいは粘膜より深くに癌が入り込んでいた場合には転移をおこす可能性があり、後日追加の外科切除が必要になります。つまりESDは病理検査の結果をみて、はじめて治療として完結します。治療に伴って起き得るリスク(偶発症)としては出血、穿孔(胃に穴があく)があります。多くの場合は内視鏡的に処置可能ですが、稀に外科手術が必要になることもあります。

★当院の患者さんの場合
 今年5月、胃ガンと診断されたB・Mさん(92)。再検査で測定した結果、癌は直径2㎝程度の隆起型と判明しました。幸い早期の癌だったため翌6月上旬、内視鏡手術を受けました。 B・Mさんの受けた手術が、ここで述べた内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)と呼ばれるものです。
 実際にB・Mさんの手術は、およそ1時間半で終了しました。術後の経過は良好で、昼食からはもう流動食の食事ができるようになりました(重湯など)。入院3日目からは固い物を含む食事を3食食べることができました。そして5日目、無事退院しました。検診などで受ける内視鏡検査と同じような感じでした。胃壁の内側を剥ぎ取ることによる不快感や、麻酔が切れた後の痛みなどもありませんでした。入院中は軟らかいものを食べ、退院してからも半月くらいの間は軟らかいものを食べるように努めていましたが、その後は通常の食事に戻しました。

★早期発見が一番大事
 胃がんは早期により小さな段階で発見することが何よりも大切です。また、予防も大切です。「ピロリ菌」に感染している人は、除菌治療を受けることが予防につながります。さらに喫煙も胃癌に関係するため、禁煙も必要です。
 早期に内視鏡治療を受ければ、完治を意味する5年生存率は95%以上です。40歳を過ぎたら、毎年、胃の検査を受けましょう。

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