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動産の所有権の移転

質問

私は先日、友人Dから自動車とゴルフクラブ一式を買い取りましたが、駐車場を確保するまでの数日間、そのままDに自動車もゴルフクラブも預かってもらうことにしました。自動車の登録名義変更も駐車場確保後にする予定でした。ところが、翌日、DはEさんという人にも同じ自動車とゴルフクラブ一式を売り渡してしまいました。自動車の登録名義変更はまだのようですが、現在、自動車もゴルフクラブ一式もEさんの許にあるようです。Eさんは、Dが私に自動車とゴルフクラブを先に売却していたことは知らなかったそうです。私はEさんに自動車とゴルフクラブ一式を引き渡してもらうことはできるでしょうか。

回答

相談者がDから自動車とゴルフクラブを購入したことにより、どちらの所有権も相談者に移転しています。ところが、DがEに二重に売却してしまった場合、相談者は、当然にはEに対し、自分の所有権を主張することはできません。買主が売主以外の人に自らの所有権を主張する(これを「対抗する」といいます)ためには、対抗要件を備えることが必要です。対抗要件を備えるまでは、確実に所有権を取得したと言えない状況なのです。所有権の登録された自動車の場合、登録名義の変更が対抗要件になります。従って、相談者がEよりも先に登録名義を変更すれば、Eに対して自分が対抗要件を備えた所有者だから自動車を引き渡せと主張することができます。
他方、登録制度のないゴルフクラブのような動産については、引き渡しを受けることが対抗要件です。本件の場合、相談者は占有改定(Dの占有が、D自身のための占有から相談者のための占有に変わった)という形の引き渡しを受けて対抗要件を備えています。ただ、外形上、Dが現実の占有を続けているため、EにはDが所有者に見えてしまいます。このような場合、取引の安全をはかるために、即時取得という制度があります。売主が動産の所有者ではなく単に占有しているだけの者であっても、買主が、売主が本当は所有者ではないことを知らず、知らないことに過失もなく、平穏かつ公然と売買等の取引により占有改定以外の占有を始めれば、所有権を取得できるという制度です。Eが、Dは相談者のためにゴルフクラブを占有しているだけで所有者ではないということを過失なく知らず、平穏公然とDからゴルフクラブを購入して既に手許に置いているのであれば、Eはゴルフクラブの所有権を即時取得し、その反射的効果として相談者は所有権を失ってしまうことになるのです。相談者がすぐにゴルフクラブを持ち帰っていればEの即時取得を防げたのですが、今回の場合、残念ながら相談者はEにゴルフクラブを引き渡せとは言えません。

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