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家賃と家主に対する貸金との相殺 ―その相殺方法は―

Q.質問

私は家主のAさんに家賃5ヶ月分に相当するお金を用立てしましたが、返済期日が過ぎ、何度も催促しているにも拘わらず、返済してくれません。
その一方で、私は毎日きちんと家賃を支払ってきましたが、このままだと今後も私の方だけ賃料を支払い、Aさんからは貸金の返済は望めない状態が続きます。
何かいい方法はないでしょうか。

A.回答

家賃と貸金とを相殺するという方法があります。民法は505条1項で「二人互ニ同種ノ目的ヲ有スル債務ヲ負担スル場合ニ於テ双方ノ債務ガ弁済期ニ在ルトキハ各債務者ハ其対当額ニ付キ相殺ニ因リテ其債務ヲ免ルルコトヲ得・・・」としております。
貴方の場合貸料債務と相殺して貸料の支払いを免れることが出来ますので、結果として貸金の返済を受けることと同じ効果が得られます。そして民法は506条で相殺の方法も定めています。「相殺ハ当事者ノ一方ヨリ其相手方ニ対スル意思表示ニ依リテ之ヲ為ス・・・」としております。

このように、相殺をするには双方が弁済期にある債務を負担することが要件となります。これを相殺適状と言いますが、貴方が相殺に供しようとする貸金債権を自動債権といい、Aさんの貸料債権を受動債権といいます。双方共が弁済期になければなりません。相殺では、自動債権は必ず弁済期になければなりませんが、Aさんの有する受動債権(賃料)は貴方が期限の利益を放棄して5ヶ月分の賃料を一度に支払うことが可能で、これによりAさんの利益を害することもありませんから、貴方の方でこれを相殺することができます。
ところで、Aさんに対する意思表示ですが、後で相殺の意思表示の有無が問題となることを避けるため、通常内容証明郵便によって行います。貴方の場合は、Aさんに対し、貴方のAさんに対する貸金債権と、Aさんの有する賃料債権5ヶ月分に相当する金額とを対当額で相殺する旨の内容証明郵便により相殺することになります。この場合、Aさんに意思表示が到達すると、Aさんの同意がなくても法的な効力が生じます。

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