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住戸間の壁の撤去 -区分所有者全員の共用部分の変更として-

Q.質問

私はマンションに住んでいますが、居住者の一人が隣の区画を購入して境界壁を撤去し、二戸を一戸にして使用しています。鉄筋が入っていない壁だから安全上問題ないと言うのですが、地震が多い昨今であり不安です。こんなことが勝手にできるのでしょうか。

A.回答

  マンションのような集合住宅を律しているのは「建物の区分所有に関する法律」略して区分所有法(以下法と略称します)です。法によりますと、マンションは区分所有の対象となる「専有部分」と、区分所有者全員の共有となる「共用部分」とに分かれます。境界壁や床は左右及び上下の境界に関するもので、共用部分ですが、上塗りの壁紙やフローリング、カーペット等は、ほとんどの例が管理規約で専有部分としているようです。
 共用部分については、法は、「区分所有者は建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない」(法6条1項)そして、共用部分の変更については、「・・区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決する」(法17条1項)とあります。建物全体を維持するための基本構造物である柱や壁は専有部分内にあっても共用部分となります。ご質問の境界壁は共用部分になります。したがって、穴を開けたり、一部撤去して扉を付けたりすることは共用部分の変更にあたります。境界壁を撤去するなど、とんでもないことで、勝手に行うことはできません。
 ご質問では隣接する区画二戸を買取り、境界壁を撤去して使用しているということですが、これは建物の保存に有害な行為と言うことができます。こうした点に問する判例があります。それは、区分所有者である1級建築士が、安全上問題がないとして、暖房設備を設置するために非耐力壁に4つ貫通孔を設けたというものです。これについて、裁判所は、無断で共用部分に加えた変更行為は区分所有者の共同の利益に反するとして、管理組合による原状回復請求を認めています。ご質問の壁は専有部分を区分する壁ですから、共用部分と判断できます。共用部分を撤去する行為は、鉄筋の有無にかかわらず、建物の保存に有害な行為といえますから、管理組合からその居住者に対し原状回復を求めることができます。    

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