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保証金(敷金)を返還しない特約 -自然損耗等についてまで負担させるのは-

Q.質問

私は、マンションを賃貸しております。賃貸借契約締結に際し、保証金を受領しますが、この賃借人が退去する場合、保証金は返還しないことにしております。次に賃貸するには、相当部分を補修しなければなりませんので、正当な理由になると考えますが、いかがでしょうか。

A.回答

  賃貸人は賃借人に賃貸物件を引渡すときは使用収益に適する状態で引き渡さなければなりません。このため、必要な修繕義務を負うことになります。ただ、この修繕義務は、特約によって軽減されたり、免れることができるとされ、賃借人が引渡しを受けた後に生じる破損や朽廃について、修繕は賃借人とする旨の特約は結構多かったようです。

 平成12年に消費者契約法が出来てから、自然損耗等についてまで、賃借人に原状回復義務を負担させる趣旨の特約は、消費者契約法第10条の規定に触れるかどうかの争いが多発するようになりました。そして、裁判では自然損耗等についてまで賃借人に負担をさせるのは消費者契約法に該当して無効であるとすることに定着しているようです。こうした裁判では、敷金を返還しない理由の説明がなされており、 ①賃貸借契約成立の謝礼
②賃貸物件の自然損耗の修理費用
③賃貸借契約更新時の更新料免除の対価
④賃貸借契約終了後の空室賃料
⑤賃料を低額にすることへの代償
などと説明されています。しかし、この理由で敷金は返還しなくてもよいとする明確な意思を表示した合意書を作っておく等の場合を除き、上記理由では合理性がないとされています。敷引特約は関西ではほぼ慣行になっているといわれています。このような場合、個々の賃借人が交渉で敷引特約を除くことは困難で、仕方なく契約する状況にあると考えられます。そうすると、賃借人が契約終了時敷金の返還を求めて裁判を提起した場合、消費者契約法第10条によって敷引特約は無効となり、返還しなければなりません。

 あなたの場合、次の入居者が入るまでのいわゆるリフォーム代まで明け渡した賃借人に負担させようとするもので、合理性があるとは言えず正当な理由にはなりません。マンション経営をしている限り、そうした補修費用の負担は覚悟すべきでしょう。    

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