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借家人が依頼した内装工事 -家主に支払義務がありますか-

Q.質問

私はアパートの一室をAさんに貸しています。Aさんは内装を毀損したようで、私に内緒で、改装を内装業者に頼み、その支払いをしないまま居なくなってしまい、Aさんの行き先は全く判りません。
内装業者は家主である私に支払いを請求してきました。私に支払義務があるのでしょうか。

A.回答

Aさんと内装業者の改装工事契約の結果である工事費用を貴方が負担する義務はありません。
ただ、家主である貴方にAさんが行方不明になったことで利得が生じている場合、別の観点から検討する必要があります。

民法では不当利得返還請求権という形で、「法律上の原因なく他人の財産または労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う」(703条)と規定しております。

それでは、Aさんが内装工事業者との間で請負工事契約をし、工事が完成した結果、貴方に法律上の原因なくしてこの工事に要した財産及び労務の提供に相当する利益を受けたと言えるでしょうか。

この問題について、最高裁判所の判決があります。最高裁第三小法廷平成7年9月19日判決では「…右建物の所有者丙が法律上の原因なくして右修繕工事に要した財産及び労務の提供に相当する利益を受けたということができるのは、丙と乙との間の賃貸借契約を全体としてみて、丙が対価関係なしに右利益を受けたときに限られる。」として、工事業者からの不当利得返還請求を棄却した事例があります。

貴方の場合、Aさんとの間の賃貸借契約書に、部屋を損傷又は汚損した場合、現状回復義務や賠償についての規定があるでしょうから、上記判例に照らしてみますと、対価関係がないのに利益を受けたとみることは出来ないと考えられます。従って、不当利得の面からも内装業者の請求に応じる義務はありません。

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