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囲繞地の通行には自動車も含まれるか

Q.質問

2年前に購入した住居が袋地となっていて、公道に出るためには隣接の他人地を通らなければなりません。
 私は自営業をしていて、車が生活に不可欠です。
 公道までの通路を自動車で通行することが認められるでしょうか。

A.回答

従来から、囲繞地通行権(袋地通行権)の通行権の幅員についての判例は、58センチから5.5メートルと千差万別とも云えるような状態でした。これらは、裁判になるまでどの様な通行がなされていたかが大きな要素を占めます。そして、袋地の所有者と囲繞地の所有者との利害は対立します。袋地の所有者が自動車で通りたいので、その分通行権を認めてほしいと云っても、それは囲繞地所有者の土地使用を大幅に制限して、大きな犠牲を強いることになります。裁判例では「もともと囲繞地通行権は袋地の利用のため、囲繞地の利用を制限するものであるから、その範囲は袋地利用に必要で、かつ囲繞地のためもっとも損害の少ない限度で認められるのに過ぎず…」としていますので、貴方の希望に添うとは限りません。

 自動車の通行についても、現代は自動車を除くと生活が成り立たないくらい普及しておりますので、自動車を除外する理由はありません。しかし、自動車を通すとなると、より通行地の幅員を広くする必要がありますので、囲繞地所有者により多くの犠牲を強いることになるので、より慎重な考慮が必要になります。
 次に、建築基準法や都市の条例で道路の幅員を規制されるのが通常ですが、通行権の幅員はこれら行政法規に左右されるかという問題があります。この問題についても、積極的に斟酌して車の通行を認めたものもありますが、裁判例の大半はこれら行政法規の存在は斟酌の一要素に過ぎないとしているようです。

 車の通行については最高裁の判例が平成18年に出ました。それによると、「…自動車による通行を前提とする二一〇条通行権の成否及びその具体的内容は、他の土地について自動車による通行を認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を総合考慮して判断すべきである。…」としています。

 貴方が住居を購入した当時の状況が判りませんが、以上述べたようなことから、貴方が袋地を買い受けたとき、既に袋地まで自動車で通行出来るような道路が出来ていたような事情でもない限り、新たに自動車用の通路を開設することは、囲繞地所有者に大きな苦痛を与えることになりますから認められない可能性が大きいと考えます。人の通行については認められると考えます。

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