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敷引きと原状回復費用の請求-特約そのものは有効だが…-

Q.質問

私は貸家や賃貸アパートを所有しており、敷金や保証金の預託を受けています。解約時の敷金や保証金の返還についての取り決めは、3割から5割を控除して返還するとしています。そして、解約時に故意又は過失で建物を傷つけた場合は、別途修理代を頂くという特約を付けています。この特約は有効でしょうか?

A.回答

通常、賃貸借契約においては、保証金を預託する契約がなされてますが、この保証金の法的性質については、建設協力金の性質を有するもの、貸金の性質を有するもの、敷金の性質を有するものなどがあり、一律には決められません。そして、この保証金や敷金については、解約時に一定額を償却費として控除する旨の特約がなされることが多いのですが、この償却規定については、借家法の精神や、民法第90条に照らして無効ではないかが問題となります。しかし、実務では一般的に有効であるとされています。

 ところで、故意、過失によって建物(襖、壁クロス、床を含むと思われます)に損傷を与えた場合、別途修理代を払うという特約そのものは有効です。但し、損傷を与えたといっても、通常の使用に伴う損傷か、その傷は賃貸物件引き渡しの際についていた旨の抗弁を受けることもあり、その認定は簡単ではありません。従って、建物を貸し渡す際に、特約を記した書面に写真を貼り付けそれに承認印を貰う等用心しておいた方がよいでしょう。
 次に、解約時の一定額の控除については有効であるとしても、その控除額が大きい場合、その額を超えて損傷部分の修繕代として控除できるかについても問題があります。大阪高等裁判所平成6年(ツ)18号、平成6年12月13日判決では、「・・本件特約に云う損傷には、賃借人による賃借物の通常の使用によって生ずる程度の損耗汚損は含まれないものと解するのが相当であり、特に、本件特約における保証金160万円は、契約終了時には、約60パーセントにもあたる100万円を控除して返還するものとされていることからすれば、右のような通常の使用によって生ずる損耗、汚損の原状回復費用は、右保証金から控除される額によって補償されることを予定しているというべきだ・・」として、控除額以上の原状回復費用を認めなかった事例があります。従って、契約終了時に償却費として多額の保証金(敷金)控除するような場合は注意すべきでしょう。

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