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契約書に嘘の記載 重要部分の錯誤であれば…

Q.質問

 私は所有するアパートの一室をAに貸しました。Aは契約書の職業欄に「上場会社の会社名」を記載して、その会社の社員と記載していましたが、入居後、実際は無職であることがわかりました。
 今後の賃料の支払いに不安があるので、賃貸借契約を解除したいと思っています。どうでしょうか。

A.回答

 貴方は、Aが上場会社の従業員だと信じて、Aとあなたが所有するアパートの賃貸借契約を締結し、Aを入居させたところ、Aは無職であった。Aとの間の賃貸借契約を解除したいが可能かどうかという質問です。

 通常アパート等の建物を賃貸する場合、借主に印鑑証明書とか住民票の写しなどを提出させて借主本人であることの確認をするのが通常の仕方です。これは仲介業者に依頼しても同様です。
 こうして賃貸借契約を締結するわけですが、借主の住所氏名に加えて職業欄を作って、借主の職業を記載する場合もあります。貸主にとって、賃料の支払いが安定的に期待できる借主の職業は大きな関心事であるからです。

 このように貸主にとって重要な関心事である職業について偽りがある場合、賃貸借契約を解除できるかが問題です。貴方が、貸主として借主との間で契約する際、借主が職業について、上場企業の従業員である旨、職業欄に記載すると、貴方は安心して契約を締結することが出来るわけですが、この職業欄の記載は偽りであって、借主は無職であった。と云う場合、貴方は契約解除が出来るか、ということですが、この場合の契約解除は、借主が職業欄の記載を偽って、無職であるのに上場会社の従業員である旨記載したために生じたものであり、これは契約の要素の錯誤であるから、解除できる。というものですが、これが、裁判になった場合、裁判所が要素の錯誤ありと認めてくれるかどうかは不明です。
借主が35・6歳と思って契約したら84歳であったということで、錯誤を認めた(東京地裁判決平成2年4月24日)裁判例がありますが、一審限りで終わっていて先例とするには問題もあります。

 貴方にとっては、賃料の支払いが問題なく支払われればよいわけで、そのためには、借主のために確実な連帯保証人がいれば契約解除しなくても問題は解決できるのではないでしょうか。そこで、借主のため、連帯保証人となる人を探したうえで、それでも解決できない場合に錯誤無効を理由に契約解除の手段を講じてはいかがでしょうか。

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